TechCrunch Tokyo 2019 に参加してきました (Day 1)

TechCrunch Tokyo 2019 に参加してきました (Day 1)

こんにちは、kenzauros です。

11月14~15日に東京渋谷のヒカリエで開催されている TechCrunch Tokyo 2019 に参加したので、リポートとともに感想を残しておきたいと思います。

まずは1日目です。

Fireside chat

「最新ガジェットを試し購入できるリテール・アズ・ア・サービスb8taの戦略」

Retail as a service

b8ta はスタートアップを含む新しいガジェットなどを実店舗で触れられるようにしているスタートアップである。 CEO の Vibhu Norby 氏が登場した。

とても楽しそうで、実際に店舗にいってみたくなった。まだアメリカにしかないのが残念だ。「アジアに出すなら東京から」と言ってくれていたが、これはずいぶん先のことになりそうだ(笑)

このあとの話にもでてくるが、アメリカではすでにネット店舗のみが頭打ちになり、リアル店舗の価値が回復しつつあるらしい。Amazon も今、ウォルマートに圧されているからこそ Amazon Go などの実店舗サービスをはじめているのかもしれない。

「自動運転はタクシーから」 (Tier IV, JapanTaxi)

このセッションは全体を通じて、 「自動運転」というよりビジネス・市場の見方という意味で非常におもしろかった。

オープンソースの自動運転プラットフォーム Autoware の開発者であるティアフォー取締役会長兼CTOの加藤真平氏による講演であった。

3次元を超えた認識を実現しているといい、デモ動画では市街地の一般道でも十分に走行が可能となっているように見受けられた。一社で全部しようというのではなく、協業を大事にするという方針を実現するため、ファウンデーション (Autoware Foundation) を設立している。

東京五輪の選手村を走る自動運転バスはざっくり言って、本体がトヨタ、内部(頭脳)がティアフォーだという。「トヨタは自前でも自動運転ができるのでは」という質問に対し、「『決められた敷地内を20台だけ2020年までにつくる』というのは『一般道を走る市販車をつくる』というミッションとまったく違う」ため、トヨタのような企業であっても協業する場合が増えているとのことで、とても納得した。

それと同時に、「決められた敷地内を走るもの」と「一般道を走るもの」、また国・あるいは米国の場合は州によっても法規が全く異なるため、汎用のAIは難しいだろうとの見解だった。

途中で急遽、JapanTaxi 社長の川鍋一朗氏が参戦し、加藤氏と進めている「自動運転はタクシーから」について語ってくれた。

印象的であったのは「自動運転が普及しても乗務員は減らない(=無人車にはならない)」ということだった。遠い未来には無人となるかもしれないが、当面は「乗務員のいる自動運転車」が活躍するようだ。

ただ乗務員は減らないものの、運転スキルは徐々に不要となる。このため、今新卒で採用している乗務員には「観光・介護・子育てのいずれかのプロになれ」と指導しているという。タクシーを必要とするのは「観光客・高齢者・子ども」だからだ。非常に明確で想像しやすい近未来のタクシー像であった。

もう一つ、日本交通(川鍋氏の祖父が創業者)創業当時、タクシーに日本車はなく、最初に導入された日本車はトヨタだったが、当初は非常に故障が多かったという。しかしタクシーは走行距離が長く、つぶれる→直すのサイクルが短いため、自動車のクオリティを上げるには最適だったという。今度はタクシーによって自動運転が普及するときがくるのだ、という「タクシーに自動運転を」というのとは逆の発想に少なからず驚いた。

「自動運転はタクシーから」Autowareが作り出す未来

「シリーズCで60億円超を調達、SmartHRのこれまでとこれから」

人事労務をクラウドで完結できるようにした SmartHR は TechCrunch Japan 2015 で優勝したプロダクトだ。私も人事労務の実務経験者であるから、これらの実務がどれだけ泥臭いものかよく理解している。

創業者の CEO 宮田昇始氏によれば12個ぐらい取り組んだサービスがあって、最後に(?)成功したプロジェクトらしい。現状では解約率が非常に低く、 Net Retention Rate が高いことも特徴だという。

「いままでと違い**『自分たちができること』ではなく『世の中の課題』**を探した」という言葉はスタートアップにとって、本質的であると感じた。

この SmartHR がニッチであって、非常によいビジネスモデルになりえた理由は下記の2点が大きいと感じた。

  • この実務だけはまだ手書きしかなかった (会計や給与などと違いソフトウェアがなかった)
  • さまざまな業種はあるが最終的に出す書類は同じ

また、ちょうど政府が電子申請を受け付ける e-Gov 基盤を整備したのも功を奏したのだろうと思う。

資金調達面では、独自のアルゴリズムや特許技術があるわけではないので、参入障壁が低いということは懸念としてあるようだが、その分、 TechCrunch のようなメディアを活用して VC から注目してもらえるようなポジショニングを続けているという。

「ボイスメディアの過去、現在、未来」

“今日を彩るボイスメディア” Voicy の緒方 CEO と Betaworks Ventures の Matthew Hartman 氏が登場し、ボイスメディアについて語った。

緒方氏いわく、アメリカと日本では音声関連ビジネスの熱狂度がまったく違うらしい。何度かぼやいてらっしゃって、おもしろかった。

  • 緒方さん「ボイスメディアやってます」
  • アメリカ「Cool!!今いちばん盛り上がってるやつだね!」
  • 日本「そんなことやってて大丈夫なの?」

実際、アメリカでは若者の 40% がスマートスピーカーを所持しているのに対して、日本は 10% にとどまるという。これについては「日本は遅い」といういつもの話だが、緒方氏には iPhone や Facebook と同じで、そのうち日本でも動画や文字情報以上に音声が活用される日がくる、という絶対的な自信があるようだった。

「音声は(文字と違って)拡散しにくいのでは」という質問に対して緒方氏は、

  • テレビ→インターネット→ボイスメディアというようにインターフェイスチェンジが起こっている
  • 目で見るメディアと考え方が違うので、「拡散しなくては」という概念にとらわれる必要もない

といった考えを示しておられたが、 Hartman 氏は「コンテンツ」と「それ以外」で異なるという見解であった。

個人的には現代であれば「コンテンツ」はやはり拡散というかシェアされるほうがいいだろうし、その方法についてもまだまだイノベーションの余地がありそうだと感じた。

ちなみに音声コンテンツが足りないことが致命的だという。コンテンツ充実には「話のおもしろい人」が不可欠であるから、人材の掘り起こしは重要課題であるらしいが、「本当に話のおもしろい人は忙しい」ので、いかに簡単にコミットしてもらうか(文字媒体でいう寄稿か)を考えているところらしい。

「Uberの日本戦略、そして自動運転と空飛ぶタクシーはどうなる?」

Uber の Émilie Potvin 氏が発表。当初15分ほどは TED さながらの発表だった。英語も非常に明瞭で聞き取りやすく、とてもアトラクティブだった。

Uber は個人タクシー手配が起源だが、都市部の渋滞により莫大な時間を失っているだけでなく、「1台に1人」という「自家用車」はそもそも無駄が多く、パーキングスペースも場所をとりすぎだという。

車・バスのシェアリング、電動自転車・スクーターなどのマイクロモビリティーによって、無駄をなくしていくことが重要だという。たしかに法規制の問題で日本では電動スクーターの導入が遅れているが、欧米の市街地では LIME などの電動スクーターが市民権を得ている。今後、シェアリングエコノミーのさらなる増加にともない、法規制も緩和されていくのだろうか。

あとはやはり誰でも考える「空」という選択肢である。「空飛ぶタクシー」が現実味を帯びてきていると感じた。

スタートアップバトル (☆印はファイナリスト)

1日目はスタートアップバトルのファーストラウンドがブロックA~Dに分かれて行われた。各3分のLTである。

各ブロックの審査員が選定した5社と参加者の投票による上位1社の合計6社がファイナリスト (☆) として2日目のファイナルラウンドに残る。

ブロックA

estie

estie」はテナントと不動産エージェントをつなぐオフィス探しのプラットフォーム。創業者は三菱地所で働いていたという。業界大手でも持っている物件が意外とかぶっていないので、1社に提案を依頼しただけでは物件の取りこぼしが生じるらしいので、複数社を横断的に検索・提案できるシステムは画期的なようだ。

提案までのスピードが早いのも特長のようだが、どうしてもその利点はオンライン完結という仕組みの上に成り立っている。肝心のテナントのターゲットが中規模事業者であることから、経営者のネットリテラシーが高くないことが考えられるため、エージェント側に窓口として積極的に使ってもらう工夫が必要だと感じた。

スペースエンジン

スペースエンジン」は商品・ブランドをもつサプライヤーと店舗 (小売店のほか美容院, ネイルサロン等のサービス店舗を含む) をつなぐ Airbnb の小売版のようなサービス。アプリの雰囲気は minne などの女子ウケしそうな感じだった。ディスプレイや販促は基本的にすべて小売店任せとなる。

収益配分は小売店35%、サプライヤー50%、スペースエンジン15% だそう。質問でもでていたが、サプライヤーが 50% では商品によっては赤字になることがありえるため、このあたりをどう変化させていくのかも展開の肝になりそうだ。

マッシュルーム

マッシュルーム」はマンション・戸建て向けの「スマート宅配ボックス」を開発・配付するサービスを提供する。ボックスは 10kg 程度の金属製で、スマートロックで解錠できる。荷物の盗難・紛失等は保険でカバーしている。ボックス自体はワイヤーロックで固定が可能だという。

月額 $4~ から利用でき、初期費用等はかからない。ボックス一個のコストは数千円らしく、従来の数万~数十万のロッカーに比べて競争力が高い。現在はパートナー企業にある程度の在庫リスクを負ってもらっており、今後電気・ガスなどのインフラ、配送関連企業などと協業することが必要となるという。

yup

yup」はフリーランスの報酬「先払い」 システム。2ヶ月後などの請求書を即日払いに変えるシステムで、利用には 10% の手数料がかかる。審査は独自で最短60分、入力されたデータと請求書のデータ、SMS などの個人データで与信を行うという。

与信手法も心配ではあるが、結局のところ請求書を買い取る、いわゆる「ファクタリング」だろう。ファクタリングでないなら、「フリーランスに報酬分の金銭を10%の利息で貸し付ける」貸金業にも見える。「トイチ」とまではいかないが、支払いが2ヶ月先でも年利換算だと 70% もの高利になるわけで、個人的には資金繰りはもうちょっと別の方法で考えておくべきだと思う。

また、別のファクタリングサービスとの差別化も「与信のスピード」しか見えなかったので、今後どのように展開していくのか疑問ではあった。

☆ SE4

SE4」は宇宙を想定したロボット遠隔操作技術を開発している。

シミュレーターでまとめて作業をプログラミングし、一気にロボットに送信することで、リアルタイム操作で発生する遅延を感じずに作業させることができるという。 たしかに30分以上の遅延が発生することもある宇宙間の通信では有効なのだと思うが、作業中に想定外のことが起こった場合などにやはり遅延が問題となるだろう。

ブロックB

SPACE WALKER

SPACE WALKER」は宇宙関連が続き、再利用型ロケットを開発している。これまで打ち上げられるロケットは毎回新しいものが製作されていたが、これを再利用可能にすることで現在の航空機のように利用でき、かつ整備期間を経て数日で次のローンチ (フライト?) ができるという。

タテカン (ラックベア)

タテカン」は不動産オーナーと作業者の直接マッチングアプリである。「くらしのマーケット」みたいだなと思ったが、ターゲットユーザーは居住者個人ではなく、自主管理している不動産のオーナーやマンションの管理組合だという。

☆ MiiTel (RevComm)

MiiTel」は電話営業・顧客対応の電話対応の内容を可視化を行うソリューションである。電話の内容からさまざまな要素を定量化しており、きちんとしたカスタマーセンターをもった会社であれば非常に有用なツールだろうと感じた。

Aill

Aill」は AI がチャットを支援してくれるアプリである。

はじめは個人向けとしていたようだが、現在は福利厚生として取り入れる会社を中心に展開しているようだ。社員のエンゲージメントを高めるツールとして採用する企業が増えているという。

こういったサービスはアクティブユーザー数が重要だと思うが、同種のアプリは飽和状態だろう。「導入している会社の社員」というある意味狭い枠組みは、出自がわかっているわけだし、ちょうど合コンのようで、意外とよいかもしれないと感じた。

palid (Handii)

palid」はプリペイドの法人カード発行サービスである。ワンクリックでカード番号発行、物理カード発行、失効などが管理できるという。

ブロックC

☆ Autify

Autify」は AI ソフトウェアテストの自動化プラットフォームである。

未だにグローバルに見ても 73% がテストを人力で行っており、 IT 予算の 1/3 である 120 兆円はテストに当てられている現実があるという。背景にはウォーターフォール型開発からアジャイル型開発が徐々に普及しているということがあり、テスト作業がおいつかない、あるいはテストの更新自体が追いつかないという状況が生じている。

基本的にはユーザーがブラウザを操作するだけで操作を記録し、自動的にテストを生成し、その後はソースコードの変更に応じて、 AI がテストをメンテナンスするという。現状はテストケース (シナリオ) は存在する前提なので、「テスト構築」を自動化するというよりも「テスト実施」を自動化するソリューションだ。

OsidOri

「OsidOri」は共働き夫婦向けの資産管理サービス。

☆ Linc’well

「Linc’well」はクリニックのオンライン診療システムであるが、現在は自前で「CLINIC FOR (クリニックフォア) 田町」というクリニックを開業し、実際に運営している。

日本のクリニックは個人商店であり、お客さんも経営者も50歳代以上なので新しい技術を受け入れ難い側面があり、それならいっそつくってしまおう、というのがモチベーションだそうだ。

Google での評価も高いそうだが、おそらく病院にかかるほとんどの日本人が抱えている苦痛(待ち時間、現金のみの決済など)を解消しているとあればそれは当然に思える。

また、医療事務員や看護師など、通常なら一度その仕事についてしまうと転換はむずかしいが、本クリニックでは幅広い職業選択ができるという。

ENDROLL

「ENDROLL」は商業施設向けARソリューション

PSYGIG

「PSYGIG」データ解析 SaaS

ブロックD

☆ Basset

「Basset」はビットコインアドレスのバックグラウンド調査 仮想通貨取引の莫大なデータベース

メディクション

「メディクション」海外医療へ。医療先進国の日本に押し寄せている。70%が中国 言語価格距離時間

越境オンライン医療相談 わずか5秒で医療翻訳 治療が必要な患者のみアップセル(海外渡航)

セカンドオピニオンとして。

airRoom

「airRoom」は家具のサブスクリプション 家具メーカーは57%減 家具メーカーの遊休資産を活用

雑貨等のラインアップは少ない 30代前後のライフスタイル変化の多い世代 女性6割 「もたない」ライトアセット

☆ KAICO

「KAICO」は九大オリジナルカイコでワクチンをつくる 桑の木しか食べない 1頭1頭がワクチンの試験管 頭数を増やすだけ カイコ1頭で300頭の豚に注射可能

規制の問題 人間用でははじめて

つくりおき.jp

「つくりおき.jp」は週一回平日全ての食事を届ける 自社キッチンで調理済みD2C

中食産業 10.2兆円

kenzauros