Windows Server 2016 の Docker では Linux コンテナーが動かないという話
結論から言うと、先に仕様を調べれば 「Windows Server 2016 のコンテナー機能では Linux コンテナーは動作させられない」 ことがわかるのですが、そこに行き着くまで試行錯誤するはめになったので、記録として残しておきます。
試行錯誤
docker-compose がない
Windows Server 2016 にはコンテナー機能が実装されており、 Hyper-V を有効化すると docker コマンドが使えます。
つまり Windows 10 Pro の Docker for Windows ぐらいの簡単さで動いてしまうものと考えてしまったのが、まず間違いでした。
Hyper-V を有効にし docker コマンドを叩いてみると hello-world
もたしかに動作しました。
(後から確認するとこの hello-world
は Windows コンテナーでした)
しかし docker-compose
を叩いてみると存在しないようです。
ということで compose の公式サイトから Windows 用のバイナリーをダウンロードして、 docker.exe と同じフォルダ (C:\Program Files\Docker
) に置いてみました。
docker-compose-Windows-x86_64.exe Releases · docker/compose
実行してみると…
PS C:\hogehoge> docker-compose version
docker-compose version 1.23.1, build b02f1306
docker-py version: 3.5.0
CPython version: 3.6.6
OpenSSL version: OpenSSL 1.0.2o 27 Mar 2018
動作はするようでした。
エラー: client version 1.22 is too old.
しかし、いざ docker-compose.yml
のあるフォルダで up
してみると…
PS C:\hogehoge> docker-compose up -d
ERROR: client version 1.22 is too old. Minimum supported API version is 1.24, please upgrade your client to a newer version
クライアントバージョン 1.22 が古すぎると言われました。 API のバージョンが 1.24 以上でないと無理、と。
docker のバージョンを確認してみます。
PS C:\hogehoge> docker version
Client:
Version: 17.06.2-ee-17
API version: 1.30
Go version: go1.8.7
Git commit: 66834de
Built: Thu Oct 25 12:16:20 2018
OS/Arch: windows/amd64
Server:
Engine:
Version: 17.06.2-ee-17
API version: 1.30 (minimum version 1.24)
Go version: go1.8.7
Git commit: 66834de
Built: Thu Oct 25 12:25:12 2018
OS/Arch: windows/amd64
Experimental: false
いや、 1.30 ですやん。
いろいろ調べた結果、このエラーは docker-compose.yml
の version
を 2.1
にすると直るらしいことが判明しました。
-version: '2'
+version: '2.1'
再度、 up
したところ同エラーはでなくなりました。
エラー: Creating network “hogehoge_default” with the default driver
しかし今度は別のエラーが発生しました。
PS C:\hogehoge> docker-compose up -d
Creating network "hogehoge_default" with the default driver
ERROR: HNS failed with error : パラメーターが間違っています。 (The parameter is incorrect.)
まったく意味不明ですが、これに関しては docker-compose.yml
に networks
指定をいれて nat
を指定すればいいらしいというコメントを見たので下記の記述を追加してみました。
networks:
default:
external:
name: nat
これで同エラーは消えました。
エラー: image operating system “linux” cannot be used on this platform
しかし、再度 up
してみると今度はなんか根本的らしいエラーが発生。。。イタチごっこです。
PS C:\hogehoge> docker-compose up -d
~中略~
ERROR: image operating system "linux" cannot be used on this platform
ERROR: image operating system “linux” cannot be used on this platform エラー: Linux OS のイメージはこのプラットフォームでは使えません。
再度、 docker バージョンを見てみると…
PS C:\hogehoge> docker version
Client:
Version: 17.06.2-ee-17
API version: 1.30
Go version: go1.8.7
Git commit: 66834de
Built: Thu Oct 25 12:16:20 2018
OS/Arch: windows/amd64
Server:
Engine:
Version: 17.06.2-ee-17
API version: 1.30 (minimum version 1.24)
Go version: go1.8.7
Git commit: 66834de
Built: Thu Oct 25 12:25:12 2018
OS/Arch: windows/amd64
Experimental: false
Server.Engine.OS/Arch
が windows/amd64
になっているので Linux コンテナーが起動できないですね。ここが linux/amd64
でなければならないらしいです。
Linux コンテナーモードへの切り替え
Windows 10 Pro の Docker for Windows ならタスクトレイアイコンから [Switch to Linux container…] を選ぶことで切り替えられるので、これに相当するコマンドを探してみたが見つかりませんでした。
stackoverflow 等で最新の Docker for Windows なら 2016 に入るよ!という情報があったので、試しに Docker for Windows 18.06.1-ce-win73 をインストールしてみたが、やはり Desktop OS しかサポートされないということで正常に起動しませんでした。
Docker for Windows EE (Enterprise Edition) なら動くのかもしれませんが、そこは未確認です。
結論: Windows Server 2016 で Linux コンテナーは実行できない
で、いろいろ調べていくうち、そもそもな話に行き当たりました。
現時点でWindows ServerのDockerコンテナはWindows Serverコンテナであり、そこで実行できるのはWindows Serverアプリケーションとなっていました。 Windows ServerでLinuxコンテナが稼働可能に、今月のWindows Server 2016アップデートで。マイクロソフトが予告 − Publickey
つまるところ、Windows Server 2016 の Docker で Linux コンテナーは実行できない ということです。
また、記事中では下記のように紹介されています。
その最初のアップデートとなる「バージョン1709」は2017年9月、つまり今月リリース予定です。同社はブログ「Sneak peek #3: Windows Server, version 1709 for developers」で今回のアップデートの概要を伝えており、新機能のひとつとしてWindows Server 2016のDockerでLinuxコンテナが稼働することを紹介しています。 マイクロソフトはこのHyper-Vコンテナに、Dockerが今年4月にMoby Projectのひとつとして発表したコンテナ環境に特化した最小限のLinux機能を提供する「LinuxKit」を組み合わせることで、Windows ServerのDockerコンテナでLinuxコンテナを実現すると説明しています。
つまり Windows Sever バージョン 1709 で Linux コンテナーに対応した ということです。
ただし、ここで注意すべきは Windows Sever バージョン 1709 であり、 Windows Server 2016 ではないということです。(参考記事ではおそらく混同されています)
このあたりの話は @IT の以下の記事が詳しいです。
Windows Server バージョン1709(ビルド16299)は「半期チャネル(Semi-Annual Channel)」サービスモデルで提供される、Windows Serverの新しい、初のバージョンです。このサービスモデルは、Windows Serverのソフトウェアアシュアランス(SA)契約に基づいて提供されるものです。 Windows Server 2016の次は「1709」? いえ、2016の次はまだ出ていません! (1/2):その知識、ホントに正しい? Windowsにまつわる都市伝説(96) - @IT
名前が Windows 10 の 1709 や 1803 の機能更新プログラムみたいでややこしいのですが、要するに基本的には Windows Server 2016 (1607) は 1709 や 1803 にアップグレードすることはできないということです。
よって、冒頭の結論に戻り、 「Windows Server 2016 のコンテナー機能では Linux コンテナーは動作させられない」 ということになります。
あとがき
Windows Server をずっと追いかけている人ならともかく、片手間の開発者にとっては非常にわかりにくいですね。
いずれにしろ Linux コンテナーのサポートぐらい更新プログラムかなんかで、なんとかしてほしかったです。
以上、グチでした。